2021年03月24日

追加ーーー彼のジョーク

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こうした騒々しさばかりが続く最中にも、クリシュナムルティは静かにまわりに起こる事柄を黙って見守っていた。二つの超大国であるアメリカとソビエト連邦間の紛争を昼食時に話し合っていたとき、彼は突然会話に加わった。そして尋ねた。

「ひとつ冗談を言いましょうか?ある夜更け、一人の酔っぱらいがクレムリンの前の赤の広場をよろめき歩き、声を限りに叫びました。『ブレジネフは大馬鹿者だ。ブレジネフは大馬鹿者だ』と。直ちに秘密警察が数名駆けつけ、有無を言わさずこの男を捕まえて牢屋にぶちこみました。翌朝この男は裁判官の前に引き出される。そして『20年と2日間シベリアで重労働につけ』と宣告される。その男は信じ難いとばかり叫び立てる。『20年と2日だって?私は大っぴらに酒を飲んでいただけじゃないか』すると裁判官が答えるんです。『大っぴらに酒を飲んだ罪は2日、20年は国家の秘密をばらしたためだ』」

テーブルのまわりは笑いの渦だった。そして二、三人の教授たちは彼等自身の冗談を始めた。クリシュナムルティは彼等の話を聞きながらそのいくつかには腹を抱えるようにして笑った。やがてその笑いが静まって少し経ったとき、彼は別の冗談を紹介した。


「ロシア人が最初の宇宙飛行士を打ち上げたときのことを憶えていますか?彼等は帰還するとクレムリンの盛大な宴会に招待された。国の主だった幹部はブレジネフ書記長を含めて全員出席していました。ブレジネフは彼等の胸に勲章をつけたとき、低い声で言った。『後から私の自室に来なさい』彼等は言われた通りに彼に会いに出かけます。すると彼は彼等に尋ねた。『君たちが地球を離れて宇宙空間にいた時、多分長い髭をはやし、頭の周りにオーラのある老人を見たと思うのだが』宇宙飛行士たちは答える。『はい、同志書記長どの、そういう人物を確かに見ました』ブレジネフは深く首を振ってうなづいた。

『思った通りだ。ところで聞きなさい。このことは誰にも一言もしゃべるんじゃないよ。もし誰かにもらしでもしたら、シベリア行きだ。判ったね』宇宙飛行士たちは『はい、書記長どの』と賢く挨拶しました。次に彼等は東ヨーロッパの共産国を順々に旅し、イタリーを訪問しました。イタリーには強力な共産党がある。ローマ法王がこのことを知って、彼等をバチカンの盛大な晩餐会に招待し、そのあとで法王から特別の祝福を受けるために彼のもとへ招じ入れられました。

すると法王はひっそりした声で尋ねた。『私の自室に来て下さい』宇宙飛行士たちは法王の私室をみて驚嘆しました。それは古式豊かな豪華さでは彼等のボスの書記長の私室をはるかに越えていたのです。そして法王は彼等に尋ねる。『諸君が宇宙空間に舞い上がっていたとき、多分長い白い髭をはやし、頭の周りにオーラのある老人を見かけたと思うが』宇宙飛行士たちは驚いてお互いの顔を見やり、そして首を振った。

『いいえ、同志法王さま、宇宙にそんな人物は誰もいませんでした』法王は物思わしげにあごをなでました。『うん、私もそう思っていたんだ。しかし、どうか誰にもそのことは言わないでほしい』」

その話に全テーブルが楽しげな笑いに包まれた。


六日間の講習が終わったとき、その成功度についていろいろな質問があった。クリシュナムルティは厳しい懐疑調で、成し遂げようと企てたこと、つまり思考と知識の役割を根本的に新しいやり方で調べてみることが成就したとは思えないという意見を述べた。しかし台所という狭い角度では、会議は成功だった。普段は肉食をしているお客たちですら、私たちが作った徹底的な野菜の食物に愚痴をこぼす人は誰もいなかった。実際のところ、お褒めの言葉が多く、何度も調理法の問い合わせがあった。今回のことは説明の難しい料理上の洗礼だったと私は感じ取った。………………

※読みやすく、よい本でお薦めです。


posted by 無来 龍 at 10:12| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする
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